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クリスマスの定番曲が失恋ソングであることについて

キーワードで振り返る平成30年史 第9回

 一方のワム!の『ラスト・クリスマス』もやはりリリースは昭和59年でまだ昭和。しかしこのナンバーもCMはもちろん、バラエティの再現VTRやクリスマスに彼女を連れていきたいおしゃれなお店紹介のVTRなんぞのBGMで多用され、やはり平成クリスマスソングの大定番の一曲となった。

 どちらの楽曲も、知らず知らずのうちに口ずさんでしまうような楽曲全体がサビのような流麗なメロディと山下達郎そして昨年のクリスマスに若くしてこの世を去ったワム!のシンガーソングライター、ジョージ・マイケルの透き通るようなハイトーンボイスが際立つ。それゆえここまでの定番となったことには何の疑問もないのだが、ちょっとだけ不思議なのはどちらもよく歌詞に耳を傾けると明らかに失恋の歌であること。それも主人公は男性。バブル以外のクリスマスというのは確かに一部を除く男性諸氏にとって涙なしでは語れない厳しいイベントではあるのだが、そんな男心をキャッチーなメロディに隠してこっそり代弁してくれているかのようなところが実に愛おしいのだった。

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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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